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【第0夜】:万国の門「助けてください2」(その2)

登場人物:ヌール・バースィル マイシカ(Carlさん)

 
今日も活気溢れる市場。
さて、どうしたものか。
返してくるわとはいったものの、市場に果物屋はひとつやふたつではない。
胡散臭い男もひとりやふたりではない。
あの子から場所とか聞いておけばよかった。
後先考えずに行動に出てしまうのはヌールの悪いクセのひとつである。
「ブラボー!!」
大きな歓声と拍手を聞いたのはそんなお悩み真っ最中のときであった。
見ると市場の一角に人だかりが出来ている。
見るとその人だかりの中心でひとりの少女が両端に火の付いた棒を掲げ、決めポーズをしていた。
決め!
きっと大道芸か何かだろう。
よし、あのお姉さんに聞いてみよう。
ヌールが数いる群集の中で彼女を選んだのは、
彼女なら長時間市場を見ていた可能性があるだろうという考えからではなく、
彼女がヌールと同じような青系の色の髪だったからという実に珍妙な理由であった。

どうやら彼女はショーの繋ぎを務めていたらしく、
しばらくすると舞台から掃けたため意外と簡単に捕まえることができた。
ショールをかぶっているが彼女に間違いない。
「ねぇ、大道芸のお姉さん、ちょっといいかしら?」
「なんどす?」
彼女の口から発せられた言葉は独特の訛りをしていたがそれはさておき。
「この辺でスリとか泥棒とか何か騒ぎなかった?」
「騒ぎ? ありましたえ」
ビンゴ! どうやら聞く人間は(偶然にも)大当たりだったようである。
ただし、このごたごたに首を突っ込んでしまったのは大間違いだったようである。
話によると被害者の胡散臭い怖そうな男――ガラスパというらしい――は
財布を盗られたうえに果物泥棒容疑をかけられたうえに
何故か人攫い疑惑までかけられているというのだ。
何故か人攫い疑惑のくだりのところでお姉さんの顔が若干引きつったような気もしたが
それはさておき。
「お姉さん、ありがとう。お礼にコレあげるわ」
細かい場所等、思った以上に詳しい情報が聞けて嬉しくなったヌールは
思わずさっき子供から頂戴した果物を手渡した。
「おおきに。うちの代わりにがんばって助けておくれやす!」
「お姉さんも舞台頑張ってね。今度は見に来るから!」
と元気に手を振り、教えられた――ガラスパが引き摺られていった――場所に向かいながら、
え、“うちの代わりに”ってどういうこと?
と思った頃にはお姉さんは随分小さくなっていた。
あー! あたしの大好きな大切な果物! なんであげちゃったんだろう!
 

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