「知ってたか? 白の天幕は翠の天幕と違って飲み物がでるんだぜ。インコいねえけど」
お腹が弱くて牛乳が飲めない飲み物商人、アルハーはカップ片手に白の天幕でくつろいでいた。
「知ってるわよ。飲み物だけじゃないわ。一通りの世話はしてくれるみたいよ」
青いポニーテールの見習い、ヌール・バースィルもカップ片手に白の天幕でくつろいでいた。
ちょっと前に翠の天幕で出会ったばかりの二人である。
そのときにもう一人、料理人の少女もいたのだが何を隠そう、
今日はその少女――スフラ――に呼ばれ、こうして白の天幕での再会を果たしているわけである。
「さーて、急に呼び出して何するつもりかねスフラは」
「さぁ? ひょっとして背が伸びた報告とか? まぁあたしにとっては丁度よかったわ。
アルハーさんに瓶でしょ。それにスフラにカップを返さないといけなかったもの」
ヌールは前回アルハーに果汁百パーセントらしいオレンジジュースをもらい、
瓶を洗って返す約束をしていたのだ。
スフラには背が伸びるらしいナントカ還元水を入れるためのカップを借りたのだが、
これは単純にすっかり返すのを忘れていた。
「ああ、そういえばそうだったな。いやあの水で背が伸びるわけ……いやいやなんでもねえ」
アルハーは目をそらした。
む。やっぱり伸びないんじゃないの……? まぁいいわ。
「というわけで、はい。この前はオレンジジュースありがとう。お礼にコレあげるわ」
ヌールは道具袋をあさり、一方の手で瓶を差し出し、
もう一方の手であるものをアルハーに放り投げた。
目をそらしたアルハーは「ぬお」とか驚きながらもしっかりそれを受け取った。
「ナイスキャッチ俺。ってヌールの大好きなリンゴじゃねえか。いいのか? もらっちまって」
「ナイスパスあたし。いいわよ。あたしの感謝の気持ちよ。
スフラみたいに器用じゃないからうさちゃんにすることはできないけどね」
ヌールはナイフの使い方をよく把握していないためうまく皮を剥くことすらままならない。
「あぁ」
そういえば……。
ヌールは手をポンと叩いた。
「リンゴで思い出したわ。あたしが頼んだ果実を使った料理を作ってくれたんじゃないかしら!」
「おお、そういえば俺もジンジャーを使った料理頼んだっけか」
そういえば果物とジンジャーを使った料理とか適当に振っちゃったわね……。
そんなのあるのかしら? スフラったら真剣に考えてたけど……。
「どんな料理が出てくるんだろうな。何か楽しくなってきたぜ。小腹もすいてきたところだしな」
「そうねぇ。きっとお菓子とかデザートとか、そんな感じの可愛らしいのだと思うわ」
なぜか料理が出てくる前提で妄想話が進んでいる。
噂をすれば影。とはよく言ったもので、そんな話をしていると件のスフラがやってきた。
「アルハーさん、ヌール。できたよ、果物とジンジャーを使った料理!」
やっぱり料理だわ。あたしったらすごい!
じゃじゃーん! という効果音が聞こえてきそうな動きと共に現れたそれは……
「生姜のリンゴ酢漬け!」
一瞬にして空気が凍りついた。その、酢漬け周辺を除いて。
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