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【第0夜】:万国の門「お買いもの」(その1)

登場人物:ヌール・バースィル フェーン・スーアイ(氷堂さん)

 
ざわざわと騒がしいお昼時。
人ごみの中、青いポニーテールの少女が一人。
大好きな果物を片手にあっちをキョロキョロこっちをキョロキョロ。
つい先日キャラバン参加を決意したヌール・バースィルは改めて街へと出てみることにした。
旅の準備がまったくと言っていいほど出来ていなかったからである。
「買出しはいいけど……そういえば果物売ってるお店以外全然知らないのよね」
ぽつりとそう呟くと手に持っていた果実にかぶりつこうとした。
あまりに果物に集中していたため、前方に人がいることにも気づかなかった。

ドンッッ! クチャッ!

「あや……ッ! ご、ごめん!!」
「痛っ、ちょっとあなたどこ見て歩いているのよ!」
自分が前方不注意だったことはすっかり棚に上げて睨み付けると、
そこにはヌールよりほんの少し小さな、そして大きな籠を背負った少女が倒れていた。
こ、この展開、前にどこかで……!
そこでヌールはふと自分が持っていたはずの果物がなくなっていることに気がついた。
あたりを見渡すとちょうど倒れた少女が手を伸ばせば届きそうなところに転がっている。
「ねぇ、そこに落ちてる果物とってくれるかな?」
「ほぇ?」
少女がヌールを見上げた一方その頃、無情にも果物の真上に通行人の大きな足が現れた。
あ……!
という間もなく非情にもクシュッという小気味良い音を立てて潰れた一方その頃、
少女はヌールの顔、より少し下を見つめ、慌てた表情であわあわ口を動かしていた。
ヌールはかつて果物だったものを指差し、少女はヌールの服を指差し、
そして同時に叫んだ。

「く、く、く、くだものー!!」
「ト、ト、ト、トマトー!!」
 

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