あの飄々とした感じで隊商の移動の指示出してた人がナヴィードさん、ふむ。
で、その隣にいるのがああ見えて実は二十歳こえてるティスア、知ってる知ってる。
で、その隣にいる目と服が青っぽい褐色のお姉さんがソティスさん、ふむふむ。
で、その隣にいる黒い布かぶった小さい子がシェナさん、ふむふむふむ。
で、その隣にいる全身が青っぽいお姉さんがネフェさん、ふむふむふむふむ。
で、その隣にいる黒い布かぶった大きい人がシュアさん、ふむふむふむふむふむ。
で、一番目のナヴィードさんに運悪く掴まってお茶淹れてくれた子がティルクさん。
ふむふむふむふむふむふむ。
青いポニーテールの少女――ヌール・バースィル――は必死に覚えていた。
全員覚えれるかしら?
ナヴィードの一声で始まった自己紹介。
出発前後に結構頑張って幾人かと知り合ったヌールだが……。
この巨大隊商である。まだまだほんの一握りに過ぎない。
現に今までに紹介された中で既知だったのはお茶商人のティスアだけである。
いい機会だしいろんな人のこと覚えておかないとね。
先に自己紹介したティルクが「はい、次」的なバトンのようなものを回すことなく、
一礼して再び、おそらくお茶淹れにどこかに行こうとしていた。
うーん、まぁ流れ的に次は隣にいるあたしよね。
と、ヌールが自分の紹介を始めようとしたときだった。
「あたしはヌ……」
「ぇ、何々? 何で皆集まってんの? ボクも混ぜてー」
突然背後からハイテンションな声がした。
「わぁ!?」
ティルクの驚いたような声もした。
そりゃ驚くわよね。あたしも驚いたわよ。誰この人! ちゃんと人の話を聞きなさいよ!
そこには布から髪から肌から白い男がいてティルクの頭の上に乗っかっていた。
名をサユキといい、学者をしているらしい。
登場の仕方といい、自己紹介の内容といい、随分ぶっ飛んだ人である。
「ん……。じゃぁ、次。君ね?」
悪びれた様子もまったくない。
……いつかその髪で見にくい両目を見て割り込みの極悪非道さについて説いてあげるわ。
ヌールは心の奥底で誓った。
気を取り直して自己紹介。
みんなの視線が集まるが大勢の人を目の前にしても気にしない。
みんなをジャガイモやカボチャと思わなくても緊張しない。
それがヌールの持ち味のひとつである。
「あたしはヌール。ヌール・バースィルよ。
まだまだひよっこ見習いだけど、お手伝いでもなんでもするわ。よろしくね」
見習いのくせにと思われても仕方ないほどに堂々と胸を張り、ヌールはニッコリ笑った。
満足満足。あと何か言うことあったっけ? ま、いっか。それよりも……。
「じゃあお隣さんに。はい、バトンタッチ!」
そのままみんなの自己紹介を聞いていたいのは山々だったが、
見習いの血がそうはさせてくれなかった。
やっぱり働いてる子がいるのにあたしだけのんびり聞いているわけにはいかないわよね。
ヌールはお茶を淹れに行ったであろうティルクを追いかける。
仕事……否、自分が興味を持ったことに対する積極性もヌールの持ち味のひとつである。
「あたしも手伝うわ、“ティル”くん!」
「……ティルク、です」
「へへ、冗談よ冗談」
さっきまでヌールがいた輪では、引き続き自己紹介が行われている。
|